私立と公立の違い~元公立校長(現私立採用担当者)に聴く~ 2016/10/1

2016/11/25

平成28年10月1日(土)開催

教員人材センター キャリアビスタセミナー

私立と公立の違い~元公立校長(現私立採用担当者)に聴く~

 

161001セミナー全体(縮小)

講師・学校紹介

アレセイア湘南中学校・高等学校 

校長 武部 公也 先生 

(以下 アレセイア 武部先生

武部先生

私は茅ヶ崎にあるアレセイア湘南中学校・高等学校の校長をしています。38年間公立で勤務し、定年退職後、3年前の4月から本校に移りました。現場にてグローバルカリキュラムを進めたい思いもありましたが、現在は校長職に就かせていただいております。

大学を卒業してから5年間地元の中学にて勤務し、その後バンコクの大使館付きへと移りました。現地では日本人学校とタイの2つの大学にて3年間勤めました。帰国してからはJICAの月刊誌の編集などにも携わりながら、教職に従事してきました。本校の採用としては、現在(10月時点)選考中でして、毎日のように面接を行っております。私は公立でも長く採用面接に携わっておりました。

本校は学園として70周年になりました。平和学園という名前のキリスト教主義の学校が始まりです。創設者の賀川豊彦先生はノーベル平和賞候補にも選ばれました。その方の、ベストセラーになった小説の著作料で建てられた学校です。建学の精神は「真の世界平和をつくるまことの人を世に送り出す」です。平和の実現に尽くしておられた賀川豊彦先生の作った学校なので、その流れを大切にする学校にしたいと考えております。

幼稚園から高校までの子どもが在籍し、生徒数は中高合わせて850人くらいで、穏やかな子どもが多いです。幼稚園から高校まで一貫したグローバル教育カリキュラムの完全実施や6名のネイティブ講師が指導する「国際英語塾」(アフタースクール)が評価されてきています。

アレセイア湘南中学校 HP

アレセイア湘南高等学校 HP

湘南学院高等学校 

理事 鈴木 節夫 先生 

(以下 湘南学院 鈴木先生

鈴木先生

私も同じく公立に38年間所属しておりました。中でも19年間は同じ学校におりました。校長を務め、退職後には横浜市の教育委員会の委員として勤務しました。先日まで文部科学副大臣に就いておられた義家弘介先生、通称ヤンキー先生とも一緒に働いておりました。他にも、法務省の人権擁護委員の任も17年就いております。

現任の湘南学院高校は、生徒の80%が進学希望です。それぞれの進学先に準じて、国公立アドバンスクラス、アドバンスクラス、選抜スタンダード、スタンダードクラスが設けられています。そのため自分のレベルに合わせてコースを選びやすく、お陰様で生徒の人数も多く、1600人くらいです。

毎年私学は生徒の人数が流動的であり、教員の採用も難しい状況です。現在私は人事担当をしているため、その現状を肌で感じております。

本校の採用ではインターネットでの公募と、私学協会の名簿にご登録いただいている方にお電話をお掛けし、選考への参加を呼びかけています。採用選考ではセンター試験程度の試験を課しており、目標は8割以上です。その後に採用選考(面接)を開始します。

湘南学院高等学校 HP

文教大学付属中学・高等学校

シニアアドバイザー

星野 喜代美 先生 

(以下 文教大付属 星野先生

 

星野先生

私は都立高校にて勤務しており、都の管理職歴15年です。当時は都立高校改革が盛んな時期であり、改革推進校の校長を任され、実績も残せたかと思います。教育委員会にいた時期もありました。公立の最後には都立白鴎高校の校長に就いておりました。そのご縁で、今の学校に校長として引っ張られました。今年で5年目の勤務です。現任校では4年間徹底して改革に励みました。

本学園は幼稚園から大学までの総合学園です。学校によっては、大学があることにより経営面で安心してしまっている学校もございます。しかし、それではいけません。本校はそれぞれが独立採算性の経営を行えるように見直し、各校舎も建て替えました。それらにより各々の独立を無事に達成することができました。今後本校が伸びるには校長というトップをうまく引き継ぐ必要がありました。今の校長も私が都立から引っ張って来た方です。私の今の役職であるシニアアドバイザーは、私が勝手に名付けました。正直なところ名前にこだわっているわけではなく、協力体制が大事なのです。

本校は女子校から始まり、共学化を経て中高を中心として90周年を迎えようとしております。前述の校舎改築の4年間、教職員が一丸となって改革に取り組みました。学校はそういった勢いも非常に大事です。私は公立での勤務時に、改革畑専門で配置されて参りました。学校をより良くするためには教員が一番大きな要因です。教員がどれだけ一致団結できるか、非常に重要な要素です。本校では一丸となった取り組みがなされており、今とても勢いがあると思います。学校も大きく変わっております。具体的な例では、自宅学習時間が46分だったところが、たった1年で2時間にまで伸びました。

学校を変える戦力として、皆さん一人一人が成長していってほしいと思います

文教大学付属中学・高等学校 HP

=パネルトーク開始=

― 私立に移られた時に感じた公立との違いは?

アレセイア 武部先生

私は茅ヶ崎の地元の公立で学び、大学だけ東京の私立大学に通いました。本校は茅ヶ崎市で唯一の私学です。

私はずっと中学校にいたので、生徒の進路の関係で私立の高校に足を運ぶ機会が多く、外から見た雰囲気はよく知っていました。しかし、中身は全く知りませんでした。例えば生徒が卒業後にどのような進路に進むかなど、十分に分かっていなかったのです。今の学校に移ることとなった際に、「初日の4月1日は7時半頃に来てください」と言われました。8時から教員礼拝が始まりました。その時に、初めて「私学に来たな。」と実感しました。

私は主に生徒指導の困難な学校に勤務していました。そのため、強く感じているのかも知れませんが、私学は生徒も職員も非常に穏やかです。また、公立は動きが速いですね。公立と私立は同じ学校でも全く違うものだと思います。

組織の違いや、長期的な勤務を考えられるかどうか等が大きな違いと言えます。組織としては、公立のトップは教育委員会であり、教育長です。教育委員会の下に各学校があります。一方私学は、学校のトップである理事長がいて、理事長に決定権があります。たとえば野球が強く、理事長権限も強い学校は、理事長の方針が野球を強くしようというものでしたら、優秀な生徒を入れることができます。

次に、公立は1校につき何年までという勤務可能な期間が決まっております。その点、私学はそういった制限がなく、何事もなければ定年まで居ることができます。公立では目指したいことがあっても異動により実現は難しいです。野球を強くしても転勤させられるため長期的な計画が立てられなかったり、学校で英語の研究をしたくても途中であきらめなければならなかったりします。そういった意味で、同じ学校で物事をじっくり形にできる私学はいいと思います。

他の先生方と重ならないところで言うと、各学校が創立時からの校訓をそれぞれに持っている点です。私学は各々の学校が各々の顔を持っています。公立は多少異なって見えても輪切りになっており、大枠は同じなのです。私学はそれぞれがそれぞれの取り組みを行っています。具体的には、学校ごとに顔が違うように、給与や諸条件も全然違います。私学での勤務を希望している方は、確認した方が良いかと思います。定年の年齢も、私学は65歳まで勤務可能な場合が多いですが、公立は60歳までです。

他にも違いはありますが、私が思い違いをしていた点で先生方のレベルがあります。公立は物凄い倍率の中合格している先生方なので、水準が高いと思っていました。しかし、実際はそういったことはなく、私学は思った以上にレベルが高いのです。自分の学校に何かがあったら生活が成り立たなくなってしまうためか、学校をより良くしようという思いが総じて強くあるところに起因すると思います。

また、基本的に異動がないのでずっと同じところにいます。こちらはプラスでもありますが、マイナスでもあります。なんでもそうですが、プラスの要素には必ず逆の発想でマイナスになり得る要素が潜んでいます。両サイドから常に考えていることが大切ですね。異動の有無に関しては、どちらが皆さんの希望に近いかを考えることで答えが一つに絞られるかと思います。管理職としては、私学の方が勤めやすいです。自分の意見を率直に言うことができ、頑張れば速いスピードで学校全体を変えられます。あとは実際に学校を訪れて肌で感じてください。学校によって全く雰囲気が違うのだと肌で感じられると思います。

― 通われる生徒に違いはありますか?

湘南学院 鈴木先生

生徒の違いは学校によってまちまちかも知れないですね。また、生徒間の流行もあるように感じます。少し前までは、各学校で茶髪やスカート丈などの生徒指導に時間を取っておりましたが、最近は全然手が掛からなくなりました。他の学校でもそのような傾向がみられるようです。私学ですと、周囲からの学校の評判はその学校の制服を着た生徒が作るともいわれています。そのため、公立よりは注意や指導がこまめに行われやすい傾向にあります。そういった注意や指導に関わらず、生徒にアンケートをお願いすると学校生活に関して「楽しんでいる」という結果となっております。しかし家庭での学習は芳しくない状況です。これまでも教員内で家庭学習を推進するよう努力をして参りました。最近の傾向として、生徒指導で時間が掛からなくなった分、学習指導の5か年計画などに向けようやく力を入れられるようになりました。

アレセイア 武部先生

公立の教頭に就いた時から10数年来、毎朝学校の正門に立って挨拶をしております。こちらは教員としての定点観測のような意味合いで行っております。正門に立つことで、生徒の入門前の素の顔を見ることができます。私の最後に勤務していた学校は、公的に教育費用の援助を受けている家庭が多い学校で、社会の二極化の厳しい部分の家庭層が多く見られました。当時は、夜中に校長先生としてs担任と共に何度も家庭訪問を行っておりました。

しかし、神奈川県の私学の家庭にはそういったご家庭は少ないですね。生徒も非常に穏やかで、距離感が近くソフトな印象です。生徒の違いは、家庭環境の違いに起因するように感じます。私学は校則が厳しいというイメージがありましたが、実際にはそんなことはありませんでした。スカートが短い生徒もおりますが、目立った茶髪は全くおりません。

公立時代には、話を聞く姿勢を取ってもらうことが大事なのでそのために何度も話を止めました。しかし、本校では礼拝中などで話を行う際に、話を聞かせるような注意をしたことがないのです。私が立つと生徒の皆さんは静かに聞いてくれます。この辺りも家庭環境の違いかと思います。

文教大付属 星野先生

本校の生徒は非常に素直で、頑張ればできる子ばかりです。教師陣による指導の大まかな違いとしては、公立はふるいに掛ける印象で、自分で選び、自分で行わせる傾向が強いです。その点、私学は面倒見がいいです。先程の話でもありましたが、家庭環境が生徒に与える影響はすごく大きいですね。私学は公立に比べ何かとお金が掛かってしまいますし、その分保護者の方から子どもへの想いが強いご家庭が多い印象を受けます。公立の中学校卒業から公立の高校入学の際には教員の手があまり掛かっているとは言えません。また、同じ公立でも学校によって生徒への手の掛け方は異なります。私が携わりました公立の中高一貫校は、非常に良いご家庭のご息女集まっており、ある意味では私学的でした。保護者の関与が大きい学校のマイナス点は、いろんな意味で保護者が口を出すという点です。協力的とも言えますが、見方を変えれば要求される度合いも大きいと言えます。本校の生徒は穏やかで良い子がそろっています。着任時には茶髪もミニスカートも数名程度はおりましたが、注意することで半年掛からないうちに落ち着きました。

今後は生徒の保護者からの自立面をもっとサポートしていきたいです。昨年の私たちの研究テーマは、生徒自身の保護者からの自立でした。公立と私立で生徒自身に起因する違いは少ないように感じます。

大きな違いは、保護者の違いと学校の組織の違いの2つです。公立は自由で放任しているところがあります。私学はそうはいきません。その点が一番大きい違いと言えます。

― 先生方の働き方に違いはありますか?

文教大付属 星野先生

同一の学校で勤務することになるので、長い間同じ顔触れで仕事をします。一見仲が良いのですが、ある意味お互いに遠慮している部分があるように思います。

公立は正直に申し上げてしまうと、クビにさえならなければお金は入ってきます。そのため、公立と私立ではやる気に偏りが見られる場合があるように思います。私学は教員間のやる気の格差は少ない印象です。

仕事面に関して言うと、入試広報部の存在が大きな違いです。私学は自分たちで生徒を集めるため、入試広報部が抱える仕事の重要度は高いと言えます。本校では国際交流部という部署がありますが、少なくとも公立ではそういった部署は見ないですね。学習指導部という部署も本校では独立しておりますが、公立ではそういった話はあまり耳にしませんでした。

私学ではこれらのような部署は、学校のPRに直結するため非常に大事になります。生徒募集のための学校改革案も様々挙げておりました。部活動に関してですが、公立ではその指導に偏りがあります。その部活が好きで担当しているような先生は非常にやる気をもって指導を行いますし、そうでない方もいます。私立では、どの先生も頑張っています。そういったやる気が採用選考時にも見られています。

アレセイア 武部先生

公立を思い返すと、教育委員会と公立学校の関係は非常に複雑です。現在の私学での勤務は本当に教育そのものといったような印象の仕事です。公立では教育委員会の存在が非常にありがたいです。教育委員会が学校に方向性を示してくれます。校長としても、何か困った際には自分のみで結論を出すことなく、教育委員会と相談ができます。

本校ではまず私からの諮問を職員に答申してもらったものを運営主任会に提出して、意見交換し決めております。公立では教育委員会に向いて仕事をせざるを得ない状況でした。教育委員会からも調査を依頼されることが非常に多かったです。また、地域との関わりの面では、公立の方が強いですね。地域差もあり、安定した地域と難しい地域では雰囲気が全く異なっておりました。

外に向けた仕事が私学では自由度が高く、どう自分で仕掛けられるかの選択肢が幅広いです。公立では県・市の教育委員会などが開催する研修制度が充実しておりましが、その反面かなり拘束されます。本校では教師塾というものを立ち上げ、定例会などの際には皆で意見交換を行っております。そういった意味で、公立よりも手作り感がありますね。

公立と私立に向き不向きはありますが、良い悪いはありません。私は公立校の勤務時代に実現できなかったことを、今私学で実現させようとしています。公立校勤務時代には大変多くの方にお世話になりました。それらが今のベースになっていることは間違いないと思います。

湘南学院 鈴木先生

組織運営に関しては、学校によって違いがみられるかと思います。本校では5年教育推進委員会、学習指導部など、学習指導を前面に出す組織を作りました。私学は理事長に大きな決定権があり、そちらを行使してばかりいると職員のやる気がなくなってしまいます。私学でトップダウンしてしまうと、あまり良い影響はないです。各教務部部長と理事長が話し合い、その後に決定することが大事になります。先生方のやる気の有無は生徒にもそのまま影響を及ぼしかねないので、やる気を維持することが大事です。本校では企業からヒントを得て、若手にチームを組ませて意見を出させています。ひとりひとりの先生が気持ちよく働くことが出来ることが大切です。先生のやる気が生徒ひとりひとりのやる気に繋がります。

― 貴校ではどのような教員を求めていますか?

アレセイア 武部先生

私が自校の職員に求めていることは、4点あります。1点目は、自ら学び続けられるかどうかです。教えることは、経験を積むことである程度補うことができます。しかし、学び続けることは案外難しいです。2点目が、社会人としての基本的なマナーです。返事をきちんとする、服装に気を付ける、これらのことを当たり前にできる方が良いです。3点目は、子どもと遊べる人。最近少ないのですが、教えることが好きなだけでなく、共に遊ぶことも大事です。最後に4点目が、総論で話せることです。各論として部分部分で話せる方はいます。例えばスポーツの中でも野球に詳しい方は多いです。その中で、スポーツ全般についても話せる方は特に欲しい人材です。

湘南学院 鈴木先生

相互で成長できる方です。振り返ってみると、教員生活は生徒に教わることが多いです。子どもに学び、子どもに寄り添うのです。自分が教えているのだという一方的なものではなく、相互にはたらきかけ合うことで成長します。生徒の想いや願いに寄り添える教員になりたいですね。学校にとって最大の環境になるのが教員です。教員の方々が成長し続けてくれることは、学校がより良くなることにつながります。是非頑張り続けてください。

文教大付属 星野先生

簡単に述べさせていただきます。教員の方々に求める点は、やる気・元気・豊かな経験・生徒の心を掴む力・生徒への愛情・協調性。以上です。