VOL.98「事故対応」

2011/08/24

夏休み中には海外研修やクラブ合宿など校外活動に教員が引率することが多い。少々の事故はあってもたいていは無事に帰校する。私も45年の長い教員生活の間にはさまざまなトラブルに遭遇したが幸いなことに大事に至ることはなかった。

9・11のニューヨークでの大惨事があった時、私が勤めていた学校では、中学3年生全員がアメリカにいた。シアトルとソルトレイクの二班に分かれて2週間の研修をして帰国の途につくところであった。

ソルトレイクの班は国内便でロサンゼルスに出て帰国する予定であった。その時の学年主任をしていたS教諭の判断は速かった。他の教員と話し合って国内便をキャンセル、バスをチャーターしてロスに向かった。各空港が混乱し足止めされた人々のあふれるなかを生徒共々全員無事に予定通り帰国した。

S教諭は長くアメリカで勉強していた英語教師である。いくら現地に精通していたとはいえセキュリテイチェックが厳しくなることをいち早く察知して国内便を捨ててバスを選択したのは大英断であった。

今や携帯電話が有効に活用できる時代になったが現地にいる引率者の判断が最終的には優先される。海外に限らず国内でも日帰りの校外指導でも引率の教員に咄嗟の決断を迫られることがある。

どの学校も基本的に単独の引率は認めないことが多い。複数であれば偏った判断が避けられるし、事故の対応に一人の教師が張り付いても安心だからである。

教員に限らず重大な決断を迫られたときに人の真価が問われるものだ。細大漏らさず精確に状況を捉え、取るべき連絡を取り、あとは腹をくくって決断するしかない。

状況の把握と緊急連絡は活動計画段階のチェックが必要である。
最善の決断については偏に日頃の生活の処し方にかかっている。
概して教師は責任を負うような位置から遠ざかる傾向の人が多いが、日頃から決断を他に委ねず自ら決する経験を積み上げておきたいものだ。また事故に遭遇したとき心の動揺を生徒に覚られない強い精神を鍛えておきたい。教師の平静さが生徒に与える安心感は大きいからだ。

2011/8/24 彦井 脩

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