VOL.80「学級日誌」

2011/04/06

近ごろの子どもは感情の起伏が浅く周辺の出来事と自分が結びつかず共感力が弱まったように思われる。他を愛し思いやる能力が共感力である。「仁」という字は「人+二」の合字で人と関わる共感能力を表し、「仁徳」とはそれが具わっていることらしい。

こうした人間としての基本的な力は実感したことを心の深奥で対象化することで磨かれるようだ。とはいえ中高生に向かって心に感じたことを日記などに書き留めるにように言っても素直には聞いてくれないだろう。

今は亡き明治生まれの父の日記が出てきた。毎日ではなくノートに思いつくままに日付を記して書いている。小樽市のはずれの小さな漁村から旧東京帝国大学に入学した若者の日々は夢に溢れていた。いつしか私もメモ程度の日記を書くようになった。
折節感じたことを書き記すことで若干なりとも物の見方が深まったと自負している。

日記に親しんでいる中高生は限られていると思うが学級日誌だけは日直になれば誰もが書かされる。

担任を受け持っている楽しみの一つがこの学級日誌を読むことである。担任の知らないところで繰り広げられた生徒たちの一日の実態を垣間見ることができるのは楽しいことである。

生徒の中にも筆達者がいる。授業中や休み時間の彼らの実態が活き活きと描かれているものや各教科担当教師の授業の様子を克明に書いているものもある。

教師名の欄が全て似顔絵といった手の込んだものもある。N先生の口癖の「ツマリーソノー」を何回言ったかを数え続けて「本日遂に新記録達成!!」といったスポーツ紙まがいの記述もあったりする。

担任は面白いものや感動が伝わるものは翌朝みんなに読んで聞かせたい。昨日の出来事をクラスみんなで反芻することで感動を共有することができる。書く楽しさを知って意欲的に周囲に目を向けるようになれば学級日誌も生徒の感性を豊かにする有効な手段の一つになるだろうし共感力も深まるのではないだろうか。

2011/4/6 彦井 脩

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