Vol.49「校内暴力」

2010/08/18

十数年も前のことになる。
中学教師をしていた教え子の兄が放課後に卓球部の指導をしていた。
そこに札付きの不良グループがやってきて、部員たちからラケットを奪って勝手に遊び始めた。
注意したところ逆切れされて殴られ、何人かの先生が駆けつけてやっと騒ぎはおさまった。

教師が応戦したら問題になるから黙って相手のなすがままにしていたらしい。

その夜、両親と妹二人を遺して彼は自らの命を絶った。
教師経験のある者なら彼の神経の脆弱さを責めることはできない。
たくさんの生徒や同僚の前で無抵抗のまま立ちつくすやり場のない無念さが痛いほど分かるからである。

教え子は労災の手続きを申請したが受諾されなかったという。

また、同僚だったT氏は千葉県の市立中学校で教師をしていたとき注意した生徒に肋骨を折られた。
法的な手続きをしようとしたが事なかれ主義の校長や教頭から止められ、我慢がならず辞職し、しばらく都内の専門学校で教鞭をとっていたという。

ある意味、教師は本当に弱い立場にある。
公私ともに一挙手一投足すべて監視の中にあり、教師のスキャンダルはマスコミの美味しいネタとなる。

公立校に比べて、私立校に教師と生徒のトラブルが少ないのは、何かあれば退学というペナルテイがあるからかもしれない。
ただ全くないわけではない。

私は長い間二つの私立中高に勤め、自分も含めて教師と生徒のさまざまなトラブルに遭遇してきた。
生徒のなかには一般の社会生活においても超えてはならないような暴言を教師に浴びせる者もいた。

教師が生徒に暴力を振るってしまうのは、こうした著しく人格や自尊心を傷つけられたときである。
どんな状況であっても教師の暴力は赦してはもらえない以上、そうした状況を招かないように日頃から努力するしかない。

生徒からつけ込まれない高い内容の授業をすること、生徒との適切な距離を保つこと、敏感に社会の動きをとらえ協調性を磨くこと。
この教師生活三原則を常にわきまえることが自ら暴力に走ることの抑制につながるように思います。

2010/8/18 彦井 脩

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