Vol.46「W杯サッカー」

2010/07/21

今回のW杯サッカーは多くの日本人の心を捉え熱くさせた。
スポーツはやはり勝ってなんぼなのかもしれない。
本番前の戦績が悪かっただけに予選を勝ち抜いた途端に手のひらを返したように岡田ジャパンを熱狂的に支持する人が多くなった。

パラグアイとのトーナメント緒戦は深夜にもかかわらず驚異的な高視聴率を示した。
残念ながら敗退したが全国民に大きな感動を与えてくれた。

駒野選手の蹴ったボールがバーを叩き枠外に弾かれ幕切れとなったが誰一人彼を責める者はいなかった。
そこに到るまでの彼の正に身体を張ったプレーが目に焼き付いていたからである。

彼は能力の限りを尽くして蹴った。
たまたまボールは内ではなく外に飛んで勝敗を分けた。
彼の心の裡は察するにあまりある。

あの時松井選手が黙って彼に近づいて肩を抱き寄せた。
ことばは全くないが駒野選手の心には十分に響いたはずだ。
彼らは歴戦の勇士だが、必ずしもファンの期待に全て応えてきたわけでないだろう。
そうした苛酷な試練を共有している者同士であればこそ、あのシーンが生まれたように思われる。

言葉を超える意思の疎通ほど深いものはない。
日本人のことばによるコミュニケーション能力の弱さを嘆く人も多いが、ことばに頼らない、正に「以心伝心」の心のふれあいを大切にする繊細な美風もわかってもらいたいものである。

国民を挙げての期待を背負った駒野選手のような切実な場合に限らず、友人や先生や身内の期待に応えられなかったことは誰もが経験するところである。

何かを成し遂げた生徒を称賛するのは難しいことではないが、周囲の期待に応えられなかった生徒にどう対応するかはた易いことではない。

教員が生徒とことばを超える関係を構築することは難しいことだが、日頃から誠実に共に学ぶ姿勢を崩さなければ、自ずと心を以って心に伝わる絆が育まれるはずである。
駒野、松井両選手のように黙っても分かり合える人間関係を多く築くことが幸せに通じることを身をもって生徒に伝えたいものである。

2010/7/21 彦井 脩

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