Vol.42「日本人の美徳」

2010/06/23

近ごろ教育の荒廃に結びつけて「日本人の美徳」の喪失を嘆く人が多い。

ところが、「日本人の美徳とは?」と訊かれ、咄嗟に適切な言葉が浮かぶ人はあまりいない。
嘆くからにはそれなりに感じることがあるはずである。

確かに世間一般に昔より行儀が悪くなっていることは否定できない。
町中で歩きながら飲み食いする人や卓に肘をついて食事する人など私の子供のころはあまり見かけることはなかった。

咸臨丸で初めてアメリカを訪れた侍たちが晩餐会に招かれた。

当然のことながら欧米式のマナーなど彼らに分かるはずもない。

ところが彼らは臆することなく堂々と和食のマナーに従って食事を済ませたそうだ。
その姿勢も所作もたいへん美しく居合わせたアメリカ人たちを感動させたという話を何かで読んだことがある。

日本人の美徳の基本を「武士道」に置くと答える人が多いようだが、私同様に「武士道の本質」をきちんと説明できる人もあまりいないようだ。

新渡戸稲造が武士道をもって日本人の生活の規範としたことは知られている。
最近では藤原正彦氏も武士道精神に基づく行動基準を日本人の品格であり美徳としている。

武士道の精神を「礼儀正しさ、謙虚さ、自己犠牲」と私なりにまとめさせていただいて、現代社会に照合すると確かに世代を超えて希薄になっているように思う。

まさかTVの時代劇で観る世界がそのまま当時の人々の生き方だと信じている人はいないと思うが、おそらく格段に厳格な生活をしていたはずだ。
悪代官も菓子折りの底に小判を入れる町人も沢山はいなかったろう。

浪人たちが営む寺子屋で生活の基本を学んだ一般庶民も武士同様にきびしく生きていたはずだ。
家の周囲の清潔を保ち町中にはゴミなどまず見られなかったという。
江戸の町の美しさは幕末に訪れた多くの外国人を驚嘆させたそうだ。

教師の役目は授業だけではない。
身近にいる大人として教師は少なからず生徒の人格形成に影響を与えてしまう。
大げさな言い方になるが教師は日本人の美徳の何たるかを理解し体得して身をもって良き日本人を育てなければならないと思う。

2010/6/23 彦井 脩

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