Vol. 33「運」

2010/04/07

「運が運を呼ぶ」と言う人がいる。

似たような話に、「福沢諭吉先生は淋しがりやだから、仲間の福沢さんが少ない財布の中にはやって来ない」と聴いたこともある。
そのときは「だからか!」と妙に納得させられた。

不運を嘆く人がよくいるが、運はどの人の前にも平等に流れている。
それに気づいて手を差し伸べるかどうかにかかっているという。

かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチも「幸福の神には前髪しかない、ためらうことなく前髪を掴め」と言っている。

どの学校にも、まるで悲劇の主人公になったように、いかに自分が不運かつ不遇かを述懐する教師も生徒もいる。
このタイプの人たちは自分が恵まれていないことをあたかも自慢話のように話す。
たぶんこの類の人たちのところには幸運が訪れることはないだろう。

人の性格は中高生の世代に決まるという。
教師は生徒のそんな大事な時期に立ち会うことになる。
生徒たちが成人になる前に、自分の前を流れていく「運」に素早く気づき掴み取るような人格を身に付けさせてやりたいものである。

ところが根暗で消極的な生徒を前向きな人格に変えることなど、そう簡単にできることではない。

中学2年生を担当していたとき、K君という寡黙で無表情な生徒がいた。
成績はよく体力も人並み以上だが、社交性に乏しかった。
個人面談の時に「キミは人と話すのが苦手そうだね」と言うと黙って頷いた。
「オシャベリな子は思慮深そうな君を羨ましく思っているよ」というと表情が動きニッコリしてくれた。

その後彼は徐々に明るくなり、オシャベリな子の友だちもできた。
自分にとって劣等感の素因が逆転されることもあると知って救われたのである。

消極的な生徒を、自ら運を掴みに行くような子に育てるのは至難の業だが、弱点の逆転の発想を教えるのも一つの方法ではないだろうか。

2010/4/7 彦井 脩

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