Vol. 31「趣味」

2010/03/24

昆虫好きが高じて理科の先生になったり、地図を見るのが好きで社会の先生になったりした人はけっこう学校にはいる。

「書」をその道の大家に習い、「これ以上続けるとプロになってしまう」とやめた人がいた。
趣味を仕事にしたくないという。
ところが、その人の書いた字を見ると素人の私が見ても下手としか言いようがなく永遠に続けても大丈夫だと思ったことがある。
大家の大先生は余程の褒め上手だったらしい。
芸事の師匠は商売上手な人が多いから注意したほうがよさそうだ。

女子校にいた時、電車で痴漢を捕まえて駅員に引き渡したといって遅刻してきた生徒がいた。
それだけでも十分驚くべきことだが、さらに、その駅員がにせ者だったというのである。
女子高生に腕をつかまれてスゴスゴとついて行く痴漢も気持ち悪いが、JRの制服を着て指先確認などをする男も奇妙である。
電車好きもここまでいくと趣味の域をはるかに逸脱している。

友人の仲間の一人に実況放送を趣味にしている男がいて、それをテープに録って聴かせるという。
「ここ浅草仲見世は酉の市を迎えて沢山の人で賑わっています。
」「大きな熊手を持った方がいらっしゃいます。
お話を聴いてみましょう。
」といった調子である。
こうなると趣味も病に近い。

授業中に自分の趣味を長々と話す教師がいる。
生徒も心得ていて授業に飽きると水を向ける。
好きなことだけにすぐ食いつき生徒は休息の時間を得ることになる。

私の弓道の師は江田島の教官をしていて戦後公職追放の憂き目にあった。
武道が復活された時に趣味の弓道のお陰で大学の体育実技講師の職を得ることができたという。

「芸が身を助けた」とよく話していた。
私も、学校の古い物置から弓が出てきた時、履歴書に弓道四段と書いておいたのを事務長が思い出してくれたのが縁で弓道部をつくり全国大会に何度も出場することになった。

履歴書の趣味の欄は面接の話題にもなりやすい。
差し障りのない趣味なら書いたほうがいい。
「縁は異なもの味なもの」は男女の仲だけでもないようである。

2010/3/24 彦井 脩

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