Vol. 30「スランプ」
2010/03/17
スポーツでも勉強でも日常の生活でも不調な時はある。
スランプという語がよく使われるが不景気の意味もあるそうだ。
正に今の日本は深刻極まりないスランプ状態ということになる。
教師は生徒のさまざまなスランプに立ち会う。
勉強にとどまらず、クラブ活動や人間関係に至るまで多種多様である。
困った生徒を前にして助言の一つも言えないようでは教師の沽券にかかわる。
ここで起死回生の覚醒の一言をとは思うものの安直に適切な言葉も浮かばない。
私の長い教員生活はこういったことの連続であった気がする。
一歩間違えばその生徒の人生の浮沈にかかわりかねないと思えば断定的なことなど言えるわけもない。
スランプ脱出方法については、さまざまな知名人が自分なりの克服した経験談を披瀝している。
もちろんヒントにはなるが全てに適応するはずもないし、それぞれの道を究めた天才たちの言葉である。
凡人が見習うのはいかがなものかと思う。
ただ、教師は生徒について少なからず情報を持っていて、それなりの対応はできる。
教師は日頃からいかに個々の生徒をよく観察することが大切かを銘記すべきである。
私は学生時代弓道部に所属して稽古に励んでいた。
的中率8割近くを維持していないと常時試合には出られない。
天分に乏しい私は努力するしかなかったが、哀しいことにすぐスランプに陥った。
好不調はスポーツにはつきものだが、不調の期間の割合の方がはるかに長かった。
身をもって一流と二流の差を痛切に感じた。
ただ、一つの谷を越える度に上達しているような実感を覚えていた。
私はいつしか不調のときこそ、さらにステップアップするための力をつけている時なんだと自分に言い聞かせるようになった。
樹木の年輪も厳しい冬の時節に硬い層を形成することを例に、スランプこそ上達の絶好のチャンスだと不調に悩む生徒に話せるようになったのは教師生活も終わりに近づいた頃である。
2010/3/17 彦井 脩
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