VOL.256 会者定離

2015/04/08

パッと咲いた桜が葉桜になりかける頃、和服やスーツに身を包んだ両親に付き添われて新入生が入学式に向かう光景はこの季節の風物詩になっている。

長く教員生活を続けてきたので、4月から新しい1年が始まるサイクルが身について半世紀以上も手帳は4月からのものを選んでいる。

大学のグローバル化が進み5年後をメドに東京大学が欧米に合わせて9月の入学式に移行する準備をしている。他大学も追随する動きがあるそうだ。欧米諸国とのタイムラグを解消するのは結構なことだが、初等、中等教育まで9月に移行するのは慎重であってほしい。

子どもたちの新しい門出は草木が芽吹く生気溢れる4月が相応しいと思うからだ。

4月の古称は卯月である。卯の花の咲く「卯の花月」という。「う」は「初」「産」を意味し、1年の循環の最初を意味するという説もあるそうだ。やはり「もみじ」よりも「さくら」の季節の方が明るい未来が拓かれるようで良いと思う。

4月は出会いの季節と言える。幼児の入園式から大学生の入学式、さらには会社の入社式に至るまで、新しい環境で新たなる人間関係が始まる。

小学校や中学校での出会いが一生の友になることもある。生涯の伴侶となる結婚相手と出会うのも環境の変わり目の4月が多いそうだ。

私は長く中高生に弓道を教えている。弓を引きしぼった状態を「会」、発射を「離れ」という。仏典「遺教経」にある「生者必滅会者定離」から採ったものだ。矢を放つのを「離れ」と称するところに深い意味がある。弓身一体となって均衡を保ち正しく「会」に入ると、自然に「離れ」が誘発される。他動詞で「離す」ではなく自動詞の「離れる」なのだ。名人は「会」に至るまで隙なく引いてくる。その時点で的中は約束され矢は自ずと正鵠を貫く。

「会者定離」は世の習い、正に「会うは別れの始めなり」で誰も否定できない。弓道同様に、人も良い出会いがあって良い別れが約束される。百花繚乱のこの季節に多くの人が良い出会いに恵まれることを願って止まない。

 

ごあいさつ

この回を一区切りに、私の書くCV日記の筆を擱きます。近々76歳を迎えるのを機に、この4月に教員人材センター キャリアビスタを辞することになりました。遅きに失した嫌いはありますが、お別れの思いを込めてタイトルを「会者定離」にしました。登録に来られた先生方と沢山の良い出会いを重ね、お陰様で良いお別れができます。長きに亘って拙文にお付き合い下さいまして、本当に有難うございました。皆様のご多幸を心からお祈りいたします。

2015/4/8 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。