VOL.253 勝って謙虚に、負けて潔さを

2015/03/04

都の中学校弓道連盟副会長を長く続けている。過日新年早々の大会があり、開会式でT会長が「日頃の鍛錬の成果を存分に発揮してください。・・・勝利した学校は謙虚であってほしい・・・」と選手たちを激励した。続けて「今や相撲だけが日本人特有の慎ましさを守り、勝っても誇らない所作で退場する」といった話をした。

閉会式では毎回のように私が講評をしているが、会長の話をうけて「負けた学校は潔さを・・・」といった話をするつもりでいたが、競技が延びて表彰のみで閉会となり機会を逸した。T会長は「相撲だけが・・・」と言ったが、近頃関取も小さくガッツポーズをする者が出てきた。剣道ではガッツポーズは禁止されていて罰則もある。

松井秀喜選手がプロ入団後すぐに、ホームランを打って勇躍してホームベースを踏んだ様子を見た父親からひどく叱責されたという話を聴いたことがある。確かに彼はホームランを打っても派手なジェスチャーでホームインすることは少なかった。

もちろんスポーツは基本的に勝敗を争うもので、派手なジェスチャーで相手が戦意を喪失するならそれも戦略の内だという考え方もある。しかしながら元来慎ましく振る舞うのが日本人特有の美徳であり、美しい伝統は守りたいものだ。

勝者のマナーと同様に敗者のマナーも心すべきである。弓道では的中のいかんに関わらず表情を変えないように厳格に指導される。ましてや的中してガッツポーズや外して首を傾けたりしたら破門ものである。感情の起伏を抑えないと次の矢に影響するからであるが確かに見苦しくもあり未練がましい。

敗れてなお悪びれることなく毅然とした態度を崩さないことは、勝って謙虚にすることより難しいことかもしれない。未練を残さず敗戦を潔く受け止めた、泰然とした姿には勝者をしのぐ美しささえ感じることもある。

ゴルフや弓道のように個人のスポーツもあれば、野球やサッカーのように複数で相手と向き合うスポーツもある。いずれにせよ試合直後に未練がましく「あそこで~たら、~れば」は見苦しい。潔く敗戦を認め、冷静に反省点を分析して次に備えるべきだ。「勝って謙虚に、負けて潔さ」は日本人の美徳の原点と言えるだろう。

 

2015/3/4 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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