VOL.248 リセット

2015/01/21

若者の入社後数ヶ月での離職率が高止まりしているようだ。苦痛を感じながらイヤイヤ忠勤に励み、滅私奉公するよりも早く見切りをつけて新天地を目指そうと考えるらしい。

離職理由の第1位は「他にやりたいことがある」だそうだ。仲人口に乗せられて初対面で結婚を決めていた昔のお見合いとは違って、入社するまでにはHPを見たり、会社訪問等々多様なアプローチをしたはずだ。自分が見込んで入社したのなら少しは辛抱してみる気はなかったのかと思う。

ヤメルもトドマルも勇気を要するが、概して「エイ、ヤッ」と思い切って「ヤメル」方に流れやすい。

「花は桜木、人は武士」という言葉がある。「桜のようにパッと咲いて美しい盛りにサッと散り、武士も命を惜しまずイザとなれば躊躇せずに自裁する。日本人にはそうした潔い生き方を好むようなところがある。

若者の離職率が日本人固有の美意識に基づくものなのか、僅かな躓きにもすぐにリセットを繰り返すゲーム機で育った世代が増えたせいか定かではないが、安易に戦線離脱するのは好ましいことではない。

第二次大戦後の日本の劇的な復興は世界の人々を驚かせた。米軍機の度重なる空襲で壊滅した廃墟を見て今の東京を想像した人などいなかった。戦後の復興に関わった人々は戦前の全てをリセットしたわけではない。東京の激変ぶりは眼を瞠るものがあるが被災を免れた貴重な建物は保存し至る所に戦前の智恵が活かされている。

日本人は潔さを好む反面、旧きに学び活かす強かさも併せ持っている。伊勢神宮の伝統技術保存の式年遷宮の智恵はよく知られるところである。

難関を突破して就職した会社を一年も経たずに離職してしまう若者にも単なるリセットではなく何らかの智恵が遺ることを祈りたいものだ。教師は自分のことは棚に上げないとできない仕事というが、自分はともかく生徒には何かを始めたらリタイアするときには何等かの智恵が遺る努力を勧めたいものである。

 

2015/1/21 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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