VOL.246 集団と個

2015/01/07

クラス担任やクラブの顧問をしていて困るのは、孤立する生徒が出ることだ。クラブは任意の活動だからイヤなら辞めればいいが、クラスはそうはいかない。

小学生ならイザ知らず、孤立しているからと中学生や高校生の友だちづくりに関わるのも如何なものかと担任は思い悩む。

人は誰しも「集団の中にいたい」「独りになりたい」という対立する思いの中で生きている。いくら社交的な人でも、時と場合によっては四六時中仲間と一緒にいたいとは思わないだろう。

「とかくメダカは群れたがる」は昭和を代表する女流作家、平林たい子の名言である。「小人物は一人でいることに不安を覚えてとかく徒党を組みたがる」というのだ。

同時代の、林芙美子の「花の命は短くて、哀しきことのみ多かりき」と同様によく知られた言葉である。

小人物が困るのは、勝手に周辺の人も自分と同じと類推して余計なお世話をすることだ。いつも独りでいる人が必ずしも寂しい思いをしているとは限らない。古来、「思索を好む賢者は書物に接し先哲を友とし一人でいることを楽しむ」と言われている。

とはいえ基本的に人は社会性をもった生き物で周辺の仲間と関わって生きている。

仲間の中で言葉を覚え意思疎通ができるようにもなる。仲間は親兄弟、近隣の人々、友人、先生、同僚である。

手紙を書いたり小説を読んだりできるのも同じ言語を使っているからで、この関係は時空をも超える。万葉集や源氏物語の世界にも心を通わせることもできる。同じ言語を用いる生活を通して日本人としての感性が培われ磨かれ文化や価値観を共有することとなる。人は所属する社会の中で生き生かされているのだ。

孤立する生徒には、余計なお世話にならない範囲内で「集団と個」について話す機会をつくりたい。「群れから個を守る」大切と同様に「自分が身を置く集団の否定」がアイデンティティーの喪失に関わることも話してやりたいものだ。

 

2015/1/7 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

ご意見・ご感想は彦井 hikoi@careervista.jp まで。