VOL.241 智恵の力

2014/11/19

知識は書物など多様なものから入手できるが、智恵は経験によってしか身に付かないと言われる。

智恵は頭の働きである。知識を活かすのも智恵だし、多様な問題に適切に対応するのも智恵である。

先日我が社主催のセミナーを私学会館で開いた。都立中高一貫校の校長をされていたお二人の先生のお話をうかがった。現在文教大付属中高の校長をされている星野喜代美先生が、教師の条件として「自分を理想の教師像に近づける努力よりも、人の気持ちを速くつかむ力をつけること」を強調された。

長く教職にあって多くの生徒や教師を見てきた豊富な経験を積み重ねてきた先生ならではの智恵の重みを感じる言葉だった。確かに教師の悩みの多くは、生徒、保護者、同僚との人間関係であり、人の気持ちを速く読み取ることが重大な意味を持つことは納得がいく。

とかく教師はいかに多くの知識を生徒に伝えるかを優先するあまり、生徒の気持ちなど斟酌するようなことは後回しになる。先ずは智恵を働かせて予め生徒の関心や興味の度合いを察知し、意欲を喚起することから始めねばならない。

「該博な知識を持つ人と、経験豊富な人とどちらを信用しますか?」と訊かれたら大抵の人は後者を選ぶと思われる。

 知識は点で、智恵は点を結びつける線という考え方がある。線によって個々の点が結ばれてそれぞれの点は輝きを放ち総合されて有効な力を発揮することになるというのだ。その線を形成するためには多様な経験に負うところが大きいことは誰も認めることだろう。

教師は知識と同時に智恵となる力も授けなければならない。とは言うものの生徒に豊富な経験を積ますことなどできるはずもない。小説を読むなり映画やドラマを観たり登場人物と共に生きる追体験することを勧奨したい。さまざまな分野の専門家の話を聴くことも同様の効果はあるはずである。

 

2014/11/19 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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