VOL.238 ランチメイト症候群

2014/10/22

トイレで食事する学生のことが話題になったことがある。ランチメイト症候群と精神科医の野沢静夫氏が名付けた症状だ。「昼食を一緒にとる仲間もいないようなダメな人間だ」と思われたくない一心でトイレで食事することになるらしい。そうは言っても「まさかトイレで?」とは思うが満更分らないわけでもない。

孤立する若者は昔だっていたがトイレで食事するような者はまずいなかったと思う。日本人の生活は昔も今も基本的には変わらないが、昔は「変わり者」程度ですまされたが今は「○○症候群」と命名されて精神科の対象になる。

視線恐怖症という症状が高じた結果が俗に言う「便所めし」となるようだ。自分が他人からどう見られているか、自分の視線が悪い印象を与えていないかと疑心暗鬼になって、人と視線を交えないだけでなく人目も避けるようになるという。

「人にどう思われようとオレはオレ」、「ありの~ままで良いのよ~♪」と強く生きている人もそうは沢山いないと思う。

女子校の現役教師時代に頭を悩ませたのが修学旅行の班決めである。必ず班からもれる者が出るからである。いちいち担任が介在するわけにもいかず、専ら取りまとめの学級委員の生徒に力を借りていた。

教師は勉強を教えることが本業だが、校務分掌、保護者対応、クラブ指導に加えて学級経営、取り分け担任としての生徒対応が難しい。

特に孤立している生徒には気を遣ったものだ。たまたま担任になった教師が個々の生徒の人格形成にどこまで関われるかといえば大きな期待はできないのが現実である。ただ、自分が担任をした生徒が大学に進学して、トイレでカバンからコンビニで買ってきたシャケ弁などをそっと出して食べる姿など想像もしたくない。

そうした生徒は概して強い自尊心に支配されている場合が多い。心の中に構築した自分像を守るうちに孤立化を深めてしまうようだ。人格形成期の中高生の身近にいる数少ない大人として教師は、ありのままの自分で周辺の人々と向き合う勇気を生徒たちの心に培いたいものである。

 

2014/10/22 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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