VOL.237 理想自己の実現

2014/10/15

イチローは小学校の卒業文集に「ボクの夢は一流のプロ野球選手になることです。・・・」と書き、本田圭佑も同様に「将来の夢」と題して「・・・ヨーロッパのセリエAに入団・・・10番で活躍・・・」と書いたことはよく知られている。

両者共に夢の自己実現を果たした英雄といえる。残念ながら周囲を見渡しても身近なところにそんな人物は誰一人いない。

女子校で教師をやってきたが、あまり夢を生徒に書かせるようなこともなかった。女性は幼くして現実を体得しつつ生きている。夢を書かせても、利口な生徒ほど「小さな幸せを紡いで平凡に生きたい」といった論調のものが多くなるからだ。

概して男の子は大きな夢を、女の子は現実に即した夢を描くようだった。ところが男子校に勤めるようになって、男子も果たせぬ夢を追うより心理的リスクの少ないささやかな夢を積み上げる傾向にあることが分り若干物足りなさを覚えたものだ。

自分の能力の限界を認識できる大人になっても理想の自己は誰もが持っている。「決断力をつけたい」「誰からも信頼されたい」「話しが上手になりたい」等々、さまざまである。

理想自己の実現を難しくしている人に二つのタイプがあるという。まずは傲慢で尊大な態度をとる人だ。心の深層にある自信のなさが虚勢となって表れるのだそうだ。そんな人が周囲の助言に耳を貸すはずもなく結果的に伸び悩む。次に異常に自分の評価を気にする人だ。オドオドして周囲の人々の言動に過敏に反応し、「バカにされていないか」「嫌われていないか」と絶えず気にするあまり、周囲からの忠告に拒否反応を示すようにもなる。

イチローや本田圭佑が並外れた資質に恵まれていることは疑いもないことだが、彼らは共に揺るぎない強固な心をもって自分と向き合い、周辺の人々の助言に耳を傾け自らの成長に活かして来たと思われる。

理想の自己実現に自分探しの旅に出たところで「涙さしぐみ帰り来ぬ」が関の山だ。他者によって自分が磨かれることを孤立化する若者たちに伝えたいものである。

 

2014/10/15 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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