VOL.235 敬語と女性語

2014/10/01

社会人になって職場で最初に指導を受けるのが社外からの「電話の対応」のようである。特に敬語の使い方については厳しく指導を受けるという。

某社で「課長さんはお出かけになっています」と電話で話す新入社員に、「部長も課長も社内の人には敬語を使うなと言ったはずですよ」と注意すると、「課長の奥様からのお電話でした」というオチがついている。敬語は関係の濃淡によって微妙に変化する。「貴方が申された・・・」といった敬語の誤用もよく聴かれる。

前回の「ヤバイの濫用」でも書いたが日本人は人間関係に合わせて言葉を組み立てている。正に敬語法は日本語独特の言語表現を象徴している。

敬語は身分制度の名残りで一切無用という方もいるが、「昨日はわざわざお出かけ下さいまして有難うございました」「いいえ突然お伺い致しまして失礼しました」などと正しい敬語で交わされる会話は美しく、礼儀正しい日本人の生活を支えている。生徒に国語の授業だけでなく日頃の生活を通して正しい敬語を習得させたいものだ。

敬語同様にあまり使われなくなってきたのが女性語である。終助詞の「・・・わ」「・・・かしら」「・・・の」「・・・こと」感動詞の「まあ・・・」「あら・・・」等々ある。「まあ、なんて美しいこと」といった言葉はあまり聴かれなくなった。日本女性独特の柔らかな表現も良いなと思う。小津安二郎作品「東京物語」の原節子が演じる「紀子」の話し言葉の美しさをCDなど借りてきて一度聴いてもらいたいものだ。

関西の言葉の「・・・やん」「・・・やんか」は元来女性語だったようだ。これも関西弁特有の柔らかさのある良い言葉だが、今は男性も使うようになっている。

男女は同権であるが同質ではない。外国の日本公使館で少女時代を過ごした女性が突然、「オイ、めしでも食いに行こうか」と言ったと聴いたことがある。かなり誇張された話と思われるが、男社会の中だけで育てばそんなことがあるかもしれない。

女性語、男性語は性差別ではなく、それぞれの特性を表す言葉である。敬語同様、末永く残したい表現である。間違っても、その道の人たちの「オネエ言葉」という会話でしか聴かれないようにはならないでほしいものだ。

 

2014/10/1 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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