VOL.228 教師の喜び その3

2014/07/16

私が勤めていた学校は6階建ての校舎で、中学1、2年生が2階、中3、高1が3階、高2が4階、高3は6階にそれぞれ教室が配置されている。

完全な中高一貫校で生徒の成長ぶりが建物の階層によって見事に識別される。2階から上って高3のいる6階まで来ると、流石に下層階のように走り回ったり奇声を発したりする者もなく物静かに落ち着いてくる。各階ごとに彼らの成長の過程を目の当たりにすることができた。

教師の大きな喜びは人格形成期の子ども達の身近にいて、その心身の成長に関わり立ち会えることだ。

同窓会・学年会・クラス会・部活のOB,OG会などで教え子達との出会いがあったり、街中の思わぬ所でも卒業生とばったり会ったりもする。すっかり大人になって丁寧な物言いできちんと挨拶されたりすると「ずいぶんリッパになったなあ」と感動を覚える。中高生の時代に身に付いたマナーが大人になって結実したのだろうと思い嬉しくなる。

大学生になって就活の時期を迎えて面接の受け方のハウツー本を読んだところで、所詮付け焼き刃ですぐにボロが出るものだ。中学校に入学して、職員室入室のマナー、教師との物の受け渡し、敬語の正しい使い方などの指導を受けて徐々に身に付けていったものは一生ものである。

生徒も色々で、もともと基本的な生活のマナーが身に付いている者と、ある事がらを機に周囲の人たちに気を配るようになる者とがいる。それが長期休暇中に行われる勉強合宿やクラブ合宿であったり、課題を与えられて取り組むグループ研究であったりもする。教師はあらゆる場面で生徒達が大人としての良識とマナーが身に付く機会もつくりたいものだ。

卒業式の日に部活の卒業生が揃ってやってきて「長い間ご指導下さいまして有難うございました」と姿勢を正して凛々しく挨拶される。一人ひとりの中一の頃の幼顔が思い出されて思わず涙腺がゆるむ。正に教師冥利に尽きる喜びの一瞬である。

2014/7/16 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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