VOL.226 教師の喜び その1

2014/07/02

私立校一筋に女子校32年男子校13年、計45年の教師生活を卒えて7年ほどになる。まだ弓道部の監督は続けているので、生徒との関わりは50年を越えたことになった。クラス担任をした生徒、授業やクラブで接した生徒を合わせると、1万人を越える数になりそうだ。その間良いことばかりではなかったが今となっては幸せな教師生活であったように思う。

長い歳月の折節に感じた教師生活の喜びを思いつくまま書き記してみる。教職を目指される方々の意欲が若干なりとも高まれば幸いである。

当然のことながら教師の最大の喜びは多くの出会いがあることだ。生徒、保護者、同僚、入試説明会で面談する受験生や保護者など多くの方々と接する機会がある。

確か寺山修司と思うが「日々生きる喜びは、今日どんな人に出会えるかと朝に思いを馳せることだ」と言った。人の一生はさまざまな人との出会いが織りなす軌跡とも言える。生徒との授業やクラブ活動での出会いは、そこで完結するものばかりではない。一生の縁や絆が形成されることもある。今なお20代から60代まで世代を超えた卒業生たちと食事する機会などにも恵まれる。

毎年年賀状は400枚ほど来るが大半が教え子からのものだ。結婚式に招ばれた教え子の賀状が夫婦最初の共同作業とコメントされたケーキ入刀の写真から、赤ちゃん入りの写真に変わり、やがては赤ちゃんだった子の成人式姿を撮った家族写真に変わることもある。孫のいる卒業生も沢山いるし、母子共に教えた生徒もいる。

女子校での教え子の息子さんを男子校で教えたこともある。今年もかつて女子校でインターハイに出場した教え子の息子さんが弓道部に入部した。正に孫のような存在で共に弓を愉しんでいる。男子校に勤めて千葉に遠征したとき、地元に住んでいた前任校の教え子が応援に来て一緒に食事したら、それが縁で後年教え子同士が結婚したこともある。女優をしている教え子のお芝居を観たり、医師になった教え子のお世話になったり、「人生が他者との出会いの軌跡」というなら我が人生の喜びは(ひとえ)に教職に就いたことに帰一するように思われてならない。

2014/7/2 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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