VOL.220 個人情報

2014/05/21

私が教職に就いた頃は個人情報の保護が問題になることはあまりなかった。全校の生徒、保護者、教職員氏名の載った住所録が全校生に普通に配布されていた。

当時定期試験の後はほとんどの教員は答案を自宅に持ち帰って採点していた。電車の座席で採点している人さえよく見かけた。自分のクラスの通知書をカバンに入れたまま紛失した先輩の同僚もいた。答案の校外持ち出し禁止が常識になっている今では考えられないことだ。

学校くらい個人情報が横溢し無造作に扱われている所はないくらいだった。年配の教員はなかなかそのクセが払拭できず。生徒の環境調査書などを自分の机の上に放り出したまま帰宅する教員もいた。今やどの学校も指導要禄は勿論、家庭環境調査書も施錠された保管場所に厳重に収納している。

三方面に分かれ3週間ほどの語学研修に中3の生徒をアメリカに引率したことがあった。日本で我が子を案じている保護者のために現地での生徒達の様子を撮った写真をネットに順次アップした。ところが他の2方面の写真が鮮明なのに我が方の写真は極めて不鮮明であった。担当教師のカメラか腕のせいと思っていたら個人情報保護のために故意に個人が特定できなくしていると聞いて驚いた。情報科の教員で日頃から生徒に個人情報保護について厳しく注意している立場上守らねばならないと言う。「こんな写真見せられる親の気持ちをどう思う」と言ったら「次元の違う問題です」と言われた。正に正論だが「責任はとるから鮮明な写真にして下さい」と強権を発動した。親の気持ちを優先したといった若干の自負もあるが、今となっては大いに反省している。以後、学校案内のパンフレットに掲載する写真のこともあり生徒の映像についての承諾書を全保護者から取るようになった。

学校内は個人情報の正に坩堝である。許容範囲がどこまでかを教師はきちんと自覚していなくてはならない。生徒のメルアドを訊くのは勿論、自分のアドレスを教えることなども慎むべきだ。その他さまざまな個人情報についても、「常識も年経れば非常識になる」ことを肝に銘じておくことだ。

2014/5/21 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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