VOL.218 今身に付けさせたいこと

2014/04/23

理工系大学の付属校に勤めていたので、研究職に就いていたり、大学でさまざまな技術開発の勉強をしている教え子が多い。

大学で介護ロボットの開発を研究していたM君から「患者さんを車イスからベッドに無事に移す作業だけでも難しいんです」とか、建築工学に進んだY君が「建築は頭の良さよりハートとセンスですよ」などと話すのを聴いた。

彼らの話を聴いていると、中高生の時代に優しい人格を形成する大切さを思い知らされる。成長の過程に身についたものは一生ものだからだ。

物づくりの基本はユーザーの気持ちにいかに寄り添うかにかかっている。利潤追求を優先するメーカーはたとえ優れたものを開発してもいずれは衰退の一途をたどることになるだろう。

我が国の自動車メーカーが多くの名車を誕生させ、世界最高の生産台数を誇るに至ったのも、設計から車輌を製造する人までユーザーの使い勝手、快適さ、安全さを優先させてきた結果である。

今人口漸減の中で各私立中高は生徒募集にシノギを削り、学校評価の対象のとなる進学実績の向上を最優先する学校が多い。

受験指導と全人教育は対立する関係ではないはずだが、ひとまず生活指導を後回しにする学校もある。そうした学校では「先生!これ受験に関係ありますか?」「これ試験に出ますか?」といった質問をする生徒が多くなる。

目先の功利に流される日々を中高時代に送った生徒たちがやがて社会人となり、多様な人間関係をうまく構築できるか若干なりとも不安を覚える。物づくりに限らずどんな職業に就いてもユーザーへの優しさが不可欠で良い仕事を全うするための条件になる。

生徒の中には受験勉強と言えば全般有効の免罪符を与えられたような大きな勘違いをする者もいなくはない。受験生殿様や王様をつくらず、日頃からいずれ彼らの人生を支える他者への優しさを中高生の世代に身に付けさせたいものである。

2014/4/23 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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