VOL.216 クセ

2014/04/09

高校から大学と続けた弓道を生徒に教えることになって今も続けている。どんな競技にも共通するが基本的にシッカリした体幹と正しい姿勢が求められる。少し油断をしていると自覚のないまま左右の均衡を欠き、気づかず続けているとクセになる。もちろん細部にもさまざまなクセがつく。

「癖」はヤマイダレで表す通り病気である。学生時代に有段者が入部したと喜んだらクセのある引き方をするのでがっかりしたことが何度もある。クセがあったら一度元に戻す分だけ手間がかかり下手な経験者より初心者が早く上達することが多いからだ。

クセは本人が最もやりやすい動きが固定化してしまったものである。スポーツに限らず、動きをともなうもの全てにクセは付いてまわる。正しい動きは一般的にクセとは言わない。スポーツでも芸事でも付いたクセと安易に妥協してしまうとそこが限界でまず一流にはなれない。

さまざまな分野で天才と呼ばれる人には必ずと言っていいくらい優れた指導者との出会いがある。どんなに資質に恵まれた人も間違ったやり方を続ければ沢山のクセに取りつかれて早々に限界を迎える。良い指導者は悪いクセが付く前に察知して即座に助言を与え、それを素直に受け入れる人が一流になる。

学生時代に出会った弓道部の後輩たちで上達の早い者は揃って性格が素直で教えられ上手であった。教師になってからも多くの弓道部員を教えたがインターハイに出場するのは忠告を抵抗なく受け入れる生徒達であった。

とかく身体の動きに留まらず、精神や心のあり方も自分のことになると見えにくいものだ。心身に悪いクセがつかないように正しい軌道を進むには、絶えず自らを省みる心を養うことと、周辺の人々から親身な助言をもらえる人的環境を整えておく必要がある。

心身のクセ克服のために「素直に聴く耳と心を持つこと」を生徒達に伝えると共に自戒の言葉にしたいものである。

2014/4/9 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

ご意見・ご感想は彦井 hikoi@careervista.jp まで。