VOL.212 幸せのカタチ

2014/02/12

世の親達は我が子の幸せを願って、あたかも既成の「幸せのカタチ」があるかのように高学歴、高収入の安定した道を歩ませようとする。いくら子どもが絵を描くことが好きでも、ギターを弾くことが好きでも画家やミュージシャンになることを勧めることは少ない。

生活費を稼げる芸術家になる確率がいかに低いか分かっているからである。一流大学から一流企業、高収入という流れは本人の努力次第で実現可能と思うのだろう。

教師は親よりも冷静に生徒個々の能力も特性も見ていて適切な判断ができるだけに、むしろ親よりも常識的な価値観を押しつけかねない。

人それぞれに価値観は異なり人生の目標も百人百様だが世間の常識に流される人は多い。常識的な既成の「幸せのカタチ」に振り回され、隔絶された思いにとらわれる人がいたら、皮肉なことにこれ以上不幸なことはない。

教師はたくさんの生徒を預かっている。中高生の世代は価値観が一定せず揺れることが多く適切な対応が必要である。教師はみな中高生の時代を越えてきた人生の先輩である。生徒達にとって素晴らしい先達であり、良きサポーターでありたいものだ。

「幸せは過ぎた日々の中にのみ存在する」と言った人がいたが、一つの見識だと思う。何も考えるヒマもなく生きていた日々を振り返って「嗚呼()あの頃は幸せだった」と想う人は少なくない。

目下ソチ五輪の様子が連日マスコミを賑わしている。日本選手の活躍に一喜一憂する毎日だが、個々のアスリート全員が天才児だったわけでもないだろう。もっと安定した道を勧められながら自分の夢を追い続けて選抜されオリンピックに臨んでいる選手も少なくないと思う。

教師は生徒達に常識的な「幸せのカタチ」を示して励ますより、個々の夢や希望を捨てることなく持ち続けることを勧めたい。たとえ夢が叶わなくても夢を目標に変え懸命に頑張った日々が後々「幸せ」を実感することも多くあるからだ。

2014/2/12 彦井 脩

彦井先生写真②  

彦井 脩

当社アドバイザー。 昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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