Vol. 21「伝えること」

2010/01/13

「教師が生徒に伝えるもっとも大切ことは何ですか」と言われて、即座に答えることのできる教師はそうはいないと思われる。

この秋に小学校のクラス会が学士会館であった。
20人近くが集まったが、何十年もよく続くものだと思う。
個々に近況報告をしていた時に、起業家として成功した安部という男が「なんとか自分がここまでやってこられたのは『健康』と『運』と『諦めなかった』ことだ」と述懐した。
苦労人の言葉だけに重く感じられた。

特に「諦めない」という言葉が心に響いた。
確かにどんなことも「諦めた」時に全ては終わり、「諦めない」うちは継続し続けるからである。

先日、テレビを観ていたら、北海道の「おといねっぷ美術工芸高校」が取り上げられていた。
全国各地から生徒が集まり、「寮生活」を通して技能を磨き、各種コンクールに入賞する生徒も多く、地元住民とも親しい関係を保っていると報じていた。

この学校の素晴らしさを、コメンテーターの見城美枝子さんがさらりと「教育はプロセスですからね」と言った。

教育に関しては取り立てて目新しい言葉ではないが、生徒が活き活きと制作に取り組んだり、住民と溶け合っている様子が紹介された後だけに強い共感を覚えた。

大学合格実績やクラブ活動の大会やコンクール入賞など、一途に勝ち組を目指すといった結果優先の風潮ならばこそ、この二人の言葉が重く感じられるのであろう。

最近の子どもは、妙に現実的になり過ぎて、初めから高い目標を掲げるようなことなく、容易に結果に結びつくものを目指すようである。

できることなら至難の業と思えるような難題を敢えて選択し、結果を怖れずひたすら額に汗してコツコツと頑張り続ける若者たちの姿を、いつまでも見続けたいものである。

教師が生徒に伝えるもっとも大切なことの一つに、「諦めずに何かをし続ける」といった「プロセスの意義」をあげてもいいのではないだろうか。

2010/01/13彦井 脩

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