VOL.195 TOKYO 2020

2013/09/25

2020年のオリンピック開催が東京に決った。日本の最終プレゼンテーションの様子をライブで観た方は少なくないと思う。歴史的な一瞬は同時性に意味があり、結果が出た後に録画を観ても感激は半減すると、私は早朝からTVを見続けた。

高円宮妃殿下から始まったそれぞれのプレゼンに魅せられ、IOCのロゲ会長が”TOKYO 2020″のフリップを掲げた時は思わず快哉を叫んだ。

滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」も話題になったが、パラリンピック陸上選手の佐藤真海さんのプレゼンは多くの人々に大きな感銘を与えた。

晴れやかな笑顔で語られる内容が、青春真っ只中での右足喪失や故郷の津波被害というあまりにも深刻だが、スポーツによって悲嘆の淵から立ち直ったというご自身の体験談は聴く者全ての心に響いた。

たまたま読んだ小説、百田尚樹の「錨をあげよ」の中にこんな一節があった。「『不幸』という奴は、それに捕らえられたものと、危うく逃れたものとで、その違いは天と地ほどに大きいものだ。その二つを同じように見つめられる人間こそは、人生の偉大なる思索者であり、またおそらくは成功を約束されている者だ」

佐藤真海さんのプレゼンを聴いていてこの一節を思い出した。彼女の明るく優しい言葉の中に豊かな許容性と思慮深い人の持つ強さを感じたからだ。

彼女は帰国後インタビューを受けていたときに「乗り越えられない試練を神様は与えない」と母親から励まされたことを述懐し、多くの人々の支えがあったことを謙虚に話していた。

終生ハッピーな人生を送る人は少ない。大小にかかわらず自分に降りかかる不幸から眼を逸らさず、自分のあるべき姿に向かって自らの意志と力で立ち向かう佐藤さんのような方もいる。

彼女のプレゼンを聴いてパラリンピック選手の見方が変わった人は多いと思う。
安直な同情など入り込む余地などなく、尊敬の念と多くの示唆を与えられることを私自身も痛切に感じた一人である。

2013/9/25 彦井 脩

 

彦井先生写真②

 

彦井 脩

当社アドバイザー。

昭和38年にキリスト教主義の女子校に勤め、その後、平成4年に男子校に転じ平成20年までの45年間教員生活を続けた。その間、塾や予備校の講師、参考書やエッセイの執筆もする。

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