VOL.192 紆余曲折

2013/09/04

「紆余曲折」という四字熟語がある。川や丘や道が曲がりくねっているさまを表す言葉で人生行路を語るときよく用いられる。

美空ひばりは名曲「川の流れのように」で「でこぼこ道や 曲がりくねった道 地図さえない それもまた人生~♪」と正に人生の紆余曲折を歌い彼女の人生模様と相俟って大衆の心を捉え大ヒットした。さすが才人、秋元康ならではの作詞である。

来し方を顧みるとドラマのような華々しい彩りなど何一つないが、父親が転勤族だったので小中高と転校を繰り返す曲がりくねった道ではあった。教師になってからも女子校から男子校にかわった。生来のノーテンキな性格が幸いしてか新たな環境にも抵抗なく溶け込めて哀しく思ったことなどない。

教師という仕事は否応なしに、たくさんの生徒たちが歩む人生の軌跡に関わることになる。

生徒の中には教師を自分の将来像と重ね合わせて見る者もあるだろう。「あんな先生に自分もなりたい」と思う生徒がいたら教師冥利に尽きるが、「ああはなりたくない」とか、「ああなったら終わりだ」と思う者がいたら、哀しいことだが正に反面教師である。ただ生徒の生きる意欲を喚起するなら結果オーライかもしれない。
教師は生徒の前に立ったら良きにつけ悪しきにつけ、人生いかに生きるべきかを身をもって示唆することになる。

高校を卒業した生徒に、中高生の時代に自分の人生に影響を受けた先生は何人いるかと訊いたら、多分多くても2~3人だろう。少なくとも授業やクラブ等々数百人の先生に出会っていながらこの程度の数字である。

人生色々で百人いれば百通りの紆余曲折の人生がある。我が人生を辿ると多様な紆余曲折の節々に大きく関わる人物が必ず登場する。「あの時あの人のあの言葉を聴いたから」とか「あの時あの人に出会わなかったら」と忘れ得ぬ人々が沢山いる。生徒の歩む道筋の傍らにでも良い思い出として蘇る教師でありたいものである。

2013/9/4 彦井 脩

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