VOL.163「グレートジャーニー」

2013/01/16

『空より高く』という重松清の小説を読んだ。この作家の作品は中学入試によく出題される。

翌年廃校が決まった東玉川高校、通称「トンタマ」に赴任した熱血中年教師「ジン」と4人の高校生の物語だ。トンタマ1回生で先輩のジンは、3年生だけの全校生に向かって「諸君は最後で終わりの生徒だ。だから何かを始めよう。レッツ、ビギン!」と檄を飛ばす。

後日、仲よし4人組はジンから「グレートジャーニー」の話を直に聴き触発されて、それぞれに心の旅立ちをする。

700万年前アフリカに誕生した人類が400万年をかけて、ユーラシア大陸を経てアメリカ大陸にまで到達する5万3千キロの壮大な旅が「グレートジャーニー」である。

世界各地に流れて行った人々によって次々と文明は築かれていく。生き残りの戦いに破れた負け組の人や現状に不遇を覚えて生地を出た人もあったろうといった話をジン先生はする。

今、格差社会が世界中に拡がるなかで自殺者が急増するといった問題が深刻化している。

生徒が学ぶべきことは沢山あるが、概して学校は競争社会に勝ち残る力の養成のみに偏り過ぎてはいないだろうか。

元来、人生は競争すべきものでもないし勝ち負けなどあるはずもない。自ら意識の底に「負」の観念を造り上げたに過ぎない。

現状に不遇を感じたら一つ所に固執せずグレートジャーニーの人々のように、勝ち残るだけでなく新たな一歩を踏み出す道もあることを示すのも教師の役目ではないだろうか。

2013/1/16 彦井 脩

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