VOL.149「話題」

2012/10/03

授業中に先生から聴いた話はいくつになっても憶えている。だ
から教師は根も葉もない与太話を生徒にするべきではないが、現役の教師時代には他愛のないウソ話をよくしていた。

以前出版したエッセー集の一篇に「ウソ」というタイトルの文章を書いた。冒頭に「僧のウソは方便と言い、武士のウソは軍略と言う。教師のウソは指導と言い、女性のウソは愛である」と書いた。前半は本で読んだ言葉で後半は勝手に加えたものだ。

医師は重篤な患者には必ずしも真実は語らないし、教師も生徒の為なら場合によってはウソもつく。

昔、先輩教師が「難病で親友を亡くした教え子が、友人を奪った病気の治療法を研究すべく猛勉強して医師になった」と生徒に話したので、大いに感動して「いい話ですね」と言ったら、
「えっ!ホントだと思った?」と言ったことがあった。また医大に合格した知人が最初の授業に出たら教授が「難関を突破した優秀な諸君の将来に期待する。ここに私の尿がある。科学的に問題ない。私が舐めるから君たちも試しなさい。医師を目指すにはこの程度の覚悟がいる」と言って試験管の液に指を入れて舐めた。学生たちも渋々従ったら「君たちは全員医師に向いていない。私は人差し指を入れて中指をなめた。観察力がなさすぎる」と叱ったという。勿論本物の尿でもなかった。

昔だから笑い話になるが今だったら物議を醸すかもしれない。
敢えてウソ話をする必要もないが生徒のやる気を喚起し元気になるような話なら許されるだろう。長時間机の前に座り続ける生徒の心が一瞬でも和むなら他愛のない話も時には悪くない。

2012/10/3 彦井 脩

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