VOL.145 「不調を活かす」

2012/09/05

定年後も頼まれて弓道部の指導をしている。8月1日から長野県松本市で開催されたインターハイに出場し、県内の飯山市で行われていた合宿に合流して四泊五日の練習をしてきた。

中1から高3までの50人ほどの部員が参加した。新入部員はこの合宿に来て初めて28メートルの距離からマトに向かって矢を射ることができる。これまでは巻藁という藁をきつく束ねたものに向かって至近距離で射ていた。

新入部員が同じように上達していけば問題ないが運動能力の差はいかんともし難く全員揃っては次のステップに進めない。皆がマト前に立っているのに自分だけ巻藁を引くのは辛いことと思うが危険がともなうので耐えてもらうしかない。

今年の合宿もKという生徒が一人だけ巻藁練習になった。汗を流しながら黙々と巻藁に向かう姿には心が痛んだ。

辛さに耐えることで順当なステップを踏んで上達している生徒よりも、キミはより強い心を育てていると上手く説明したいが、下手な慰めが彼の自尊心をさらに傷つけるのではないかという不安もあった。

人の真価は逆境にあるときの生き方に現われるという。不調のときにこそ、そうした状況の中から何かを学び取るような生き方を生徒たちには勧奨したい。一方、全て順調にいっている生徒に「好事魔多し」などと水をかけるような物言いは避けたいが順境で気を抜かないように併せて伝えたいものだ。

ところで、スタートで出遅れたK君は実に良く出来た子で素直にこちらの思いを受け入れゆっくりではあるが着実に上達し合宿中に皆と同じようにマト前で練習ができるようになった。

2012/8/22 彦井 脩

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