VOL.108 お土産

2011/11/23

塾でも教えたことがある。よく言われたことは、「授業中にお土産を持たせてください」だった。

問題の解説や解き方の他に、何かプラスの情報を加えることである。

学校では、ある程度担当する教師の裁量で長い時間をかけて一つのテーマを組み立てる授業もできる。

しかし塾では時間毎に完結していなければならない。したがって受験に役立つための即戦力が身につくワザや情報を授業で生徒に提供し、「今日この授業を受けてよかった」と毎時間思ってもらうことに専念する。それが塾離れを防ぐことになるからである。

過日、NHKで灘中高の名物教師の授業が紹介された。中学3年間教科書を全く使わずに中堪助の『銀の匙』の講義をし続けたという。

かつては灘に限らず教科書に準拠しないで、自らの個性を活かした授業をする教師もたくさんいたが、今はほとんどの学校が教科毎にシラバスを具えていて、教師が独自の授業展開をするのが難しくなっている。

今、少子化の波はもろに私学を襲い、生き残りの条件は偏に大学進学率の向上ということで私立校は鎬(しのぎ)を削っている。そうした時勢に呼応して授業内容も予備校化の傾向を強め、生徒たちもそれを望んでいる。

いつからか進学校という名前も聴かれるようになった。学校も生徒も、ひたすら目的達成のため受験対策に明け暮れするのが現状である。

こうした現実の中で授業を受け持つ教師は世の趨勢や学校の姿勢、生徒の要望に柔軟に折り合いをつけていくしかない。

結果として生徒の学習意欲が高まり好ましい影響を与えるなら受験対応優先も決して間違いではない。

学問の王道たる「真理の追究」を逸脱することなく、受験情報に限らず多様なお土産を生徒に持ち帰らせる授業展開が、今や教師に求められているようだ。

2011/11/23 彦井 脩

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