VOL.105「子どもの言うことだから…」

2011/10/19

「子どもの言うことだから…」「子どものやることだから…」と大人の度量の広さを見せる人がいる。

そういう妙に物分りのいい大人を見ると、近ごろ歳のせいかとみに心がざらつくようになった。

「子どもだから言ってはいけないこと」も、「子どもだからやってはいけないこと」もあるはずだ。

教員を辞めて3年になるが、今もクラブ活動の弓道部の指導にだけ土曜日ごとに出かけている。大人しい良い子が揃っているが、なかには何をしても許してくれるような大人に囲まれて育ったとしか思えない子もいる。

つい先日も先生にタメ口をきいて注意をされたという。もとはといえば授業中に居眠りをしていて怒られたらしい。自分のしていた行為を棚にあげて先生の怒り方に腹を立ててタメ口をきいたらしいのだ。

日頃から「生きる知恵と力」を鍛え高めるのが武道であることを繰り返し言い聞かせてきた。「武」という字が「矛(ほこ)」と「止」の会意という説(止は足で「矛を持って歩く」という説もある)に従えば、武道の基本的な精神は危険に近づかないことである。

敵と戦って身を守るのは本来の武道精神ではない。まず敵対する関係をつくらないことである。災害等に遭った時に落ち着いて最善の道を選択する胆力や、事前に危険を察知する能力を高めることが武道の根本精神である。

礼を重んじるのも良好な人間関係を保つためと周囲のあらゆるものに対して謙虚に敬意を表すためである。

子どもが身近なしかも勉強やクラブの指導を受けている先生に対して礼を失するようなことがあったら厳しく叱らなければならない。

今日本は正に試練の直中(ただなか)にある。その渦中に向かう生徒に不可欠な条件は周囲との良好な調和を保つための「生きる知恵と力」である。

生徒の身近にいる大人として教師は、彼らが目に余ることをしても、「子どもの言うことだから…」「子どものやることだから…」と放置するようなことがあってはならない。

2011/10/19 彦井 脩

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