VOL.103「守破離」

2011/10/05

武道や茶道の世界で用いられる言葉である。

「守」は師や流派の教えを守り忠実に技を磨くことだ。この基本的な練磨の徹底が次の「破」を生むことになる。

「破」は基本的な力を完全に身につけたとき、他流や自分の創意工夫した技に挑戦することだ。

「離」は、伝統の殻を打ち破って新たに独自の境地を打ち立てることである。

それぞれの分野で後世に名を残した達人と言われる人々は、この「守破離」を全うされた方たちなのだろう。

この三つは人生のさまざまな場面で実感させられる。特に「守」から「破」に至る過程は誰しも大いに煩悶するところである。

クラブ活動の指導に限らず、学習活動でも基本と発展の移行に躓く生徒は必ずいる。

面白くないと思われる基本的な反復繰り返しを生徒に楽しく感じさせるのは教師として最高の資質である。

基本の大切さを百も承知で未熟なまま難度の高い段階に挑戦して失敗した生徒をイヤというほど見てきた。

逆に基本重視の呪縛から脱けられず恵まれた才能を枯らしてしまう者もいた。小学校で習った算数が捨てられず代数を用いずに解き続ける生徒もいるそうだ。

基本を楽しく繰り返させることと同様に、発展段階に進ませる機を見極める能力は教師にとって不可欠の資質であろう。

スポーツの世界では、今や一流アスリートには優れたコーチが個々の選手に見合った最適なメニューをつくって効果的な段階を踏ませている。

教師は人格形成期の生徒たちの身近にいる、しかも影響力の大きな大人である。

教師が生徒の人生の軌跡に立ち会えるのは「守破離」のうち、せいぜい「守」と「破」の段階だろう。

生徒が新たな一歩を踏み出す最善の機に、時を移さず意欲的に決断する勇気を発揮させることこそ、教師の第三の資質であろう。

2011/10/5 彦井 脩

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