VOL.100「私学展」

2011/09/07

この8月20日(土),21日(日)の2日間、東京都私立学校展が有楽町の国際フォーラムで開催され、私は「なんでも相談コーナー」に両日詰めて相談に応じていた。

通算で二百組を超える相談を受けたが質問内容はさまざまで、「女子野球部のある学校は?」「算数のできる子を優遇してくれる学校は?」等々難問もあるが、多くは第一志望校の適切な併願校であったり、自宅からの交通至便の学校などであった。

何組めかに母親と少しとんがった男の子がきた。「勉強嫌いだから高校は行かないって・・・」と前に座るなり息子を見ながら母親が言う。確かに「なんでも相談」とは書いてあるが一瞬返す言葉を失くした。あらためて息子を見ると悪びれる様子もなくだらしなくテーブルに両肘をつき、珍しい動物でも見るようにこちらを見ている。

教師歴45年の血が騒ぎ、思わず「キミ!何か好きなことないの?」と訊いた。「キックボクサーになるって言うんです」と母親が答える。「良いねー、メジャーなスポーツじゃないのが良いよ」と息子を見ると、意外だったらしくキョトンとしている。
「履歴書に趣味キックボクシングと書いてあったら興味を引くよね」と言うと、緊張を解いた顔でニコリと笑った。すかさず「将来、プロになるつもり?どうやってライセンス取ったり、契約を結ぶか自分で調べんといかんよね」と言うと「ウン」と頷く。「それくらい自分でやる力は付けとかんとね」続けて「プロになるハードな練習に耐えられたら将来なんでもできるよ」と言ったら表情が明るくなった。スポーツが盛んで比較的試験のやさしい学校を何校かあげ、ブースで詳しい情報を訊くようにすすめた。

先日玉川学園の創立者である小原國芳の自伝を読み苛烈な幼少時代が大きな人物を育むことを痛切に感じた。平和な時代に育っている今の子供たちには「生きるとはこういうことだ」と実感する場がない。スポーツがその一端にでも応えてくれたら幸いなことである。

あの母と子が晴れやかな笑顔で「色々聴いてきました」と帰りに寄ってくれた。胸の奥まで温もりがひろがった。

2011/9/7 彦井 脩

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